凍り、解け、そしてまた凍る
最初に書いた自分のNETHER考察を見返してやっぱり何か物足りない、何か書き残しているような気がして大量に残したはてブロの下書きをガン無視しつつこの下書きを書いています。さぁ、いつ書き終えるかはわからないけど最後まで戦い抜いてみよう。
こちらがNETHER考察第一弾です。よかったらどうぞ。
ってことでTHE NETHER考察第二弾
第一弾を書き終えた時、2週間弱私を悩ませ続けたNETHERからやっと解放されて達成感しかなかった。やっと終わった〜〜!!と思ってはてブロは見直しもしないままUPして寝た。もう何も考えたくなかった。
けど、はてブロをあげてからどことなく"何か書き残している感"があった。なんだかこれで終わらせてはいけない気がした。それはきっと多分いや、絶対
最初と最後のモリスのシーンがマジで意味不明だったからだ。
まずは「あはぁっ🥰モリスたん出てきたぁ🥰🥰🥰」と「モリスたんバイバイ😭😭😭」としかその最初と最後のシーンを見てなかった最初の自分を殴りたい。この舞台の中で一番重要なシーンで、一番NETHERにおいて伝えたかった事だったんだと気が付いた時にはもう千秋楽前日だった。
最初と最後のシーン、どちらもモリスは傘を差します。最初のシーンは雨が降っているから、最後は雪が降っているから。最初、あの雨のシーンを見た時は嫌な予感しかしなかった。「あっ、これ絶対モリスに消せない過去あるやつや…………よくサスペンスとかでみる最初のシーンや……………」と思ったのをよく覚えてる。同時にこの最初のシーンが後々伏線として出てくるんだろうな〜とサスペンス的直感で感じた。感じざるを得ないシーンだった。
この雨のシーンでは幕の後ろに1人の男性がいた。机に突っ伏して顔見えない状況。それがモリスの父親だと気づくのにそう時間はかからなかった。きっとあれはライフサポートシステムを受け、NETHERの世界に入り込んだモリスの父親の姿だったのだろう。
私には結局最初の雨のシーンはそれしか伏線を回収することができなかった。
最後の雪のシーンの伏線なんて回収もへったくれもなかった。もっと意味が分からなかった。「ああ、、、、季節が廻ったんだな、、、、」と思った。雨が降る梅雨の季節から、シムズとドイル、そしてアイリスとの恋愛を経てNETHERの捜査を終えると現実の世界は雪が降る冬になっていた。そういう月日の経過を表しているんだと思った。けど、
そんな単純な話じゃなかった。
っということで本題へ。
まずこのNETHERの世界では”水”がすごく大切な要素。何故このNETHERの世界で重要視されるのか。それは水は溶け、凍るから。
ちょっと何言ってるかわかんないですよね、もう少し噛み砕いていきます。
NETHERの世界で"水"が登場するのは三箇所。
①モリスが雨が降っていることを確認する場面
②アイリスが氷のケーキを貰う場面
③モリスが雪を手に取って胸に当てる場面
結果から先に言うとNETHERの世界での水という物質は”実体のあるもの”として認識することの出来る非常に重要な要素になります。
シーンはパパであるシムズがアイリスのお誕生日(結局アイリスdayとして祝われていたけれど)をお祝いした時、アイリスに"氷で出来たケーキ"をプレゼントした時の場面から。この氷のケーキは溶けると同時に凍ることが出来る一生無くならないケーキ。
何故このNETHERの世界で急に"氷のケーキ"が登場してきたのだろうか、"決して消えないもの"である必要があるならガラスで作られたケーキでもよかったはずである。
アイリスはこのケーキをもらって徐に耳を近づけ、
「小人さん達がファルセットで歌ってる」
と言う。
ここでまず
"ファルセットってなんだ"(無知)
という超素朴な疑問を浮かべた。いくらNETHERの世界でも小人さんの登場急すぎるだろ????使う言葉が幼稚じゃない?????お伽話すぎん??????そんなツッコミが観劇中の私に次から次へと刺さった。ちゃんと観劇しろ
じゃあファルセットって何なのか。
ファルセットという言葉の元々の意味は「不適切な声(発声)」「偽りの声」といったものである。十分な音量が出ない、音色的に欠陥がある、言葉がのらないといった理由で歌唱に不適当な声ということである。
"偽りの声"
きっとこれを日常で使う場面があったら多分それは「裏声」という意味で使うんじゃないかな。ここでアイリスは「小人さん達」と発言する。つまり複数の小人たちがワーワーとファルセットを歌うのです。ファルセット=偽りの声ならば小人たちはアイリスに対してそのケーキが偽りであることを警告しているように感じざるを得ないように感じた。
しかしここで気になるのはその後のパパの発言。
「私には聞こえないなぁ、きっと子供にしか聞こえない音なんだろう」
同じ偽りの世界にいるのにも関わらず、パパには聞こえずアイリスには聞こえるなんてことはきっとありえないはず、感覚も音も景色もリアルにそして正確に表現する世界でそんな欠点があるはずがない。それなら、
聞こえないフリをしている
のではないだろうか。
では一体なぜ聞こえないフリをしなくてはならなかったのだろうか。それは
アイリスを失いたくないから。
この音を聞いた後、アイリスはパパに対して
「だから私に歳をとって欲しくないの?」
「小人さんたちの声が聞こえなくなるから?」
とパパに質問をする。
つまり言い換えれば「パパがアイリスに聞こえた”偽りの声”を聞こえなかったフリをするのはアイリスに歳をとって欲しくないから?」と訳すことが出来る。
シムズはアイリスが歳を重ねることに対して「君が歳を取ると、この世界のバランスが崩れるんだ」と発言する場面がある。これは確かにNETHERの世界で歳を重ねると現実世界とのギャップによってバランスが崩れるのかもしれない。しかしそれだけではない。アイリスが成長してしまえば、シムズにとっての大好きな幼女アイリスの形を失うことになる。
でもそれだけだろうか。多分シムズ自身はファルセットが"偽りの声"であることを知っているのではないだろうか。ファルセットが偽りの声であると知りながら、つまりNETHERという世界が偽りの世界であると知りながら、彼はアイリスに対してNETHERに居続けてほしくてわざと聞こえないフリをしたのではないだろうか。
シムズの聞こえないフリは不器用な彼なりの
精一杯の愛情表現だったのである。
しかし結局彼は本当にアイリスを愛していたからこそ、アイリスには現実の世界で生きていくことを勧めた。彼は本気で愛していたのにも関わらず、それを伝える事ができなかった。愛していたから。アイリスとドイルの人生を正しい方向に進める事が彼なりに出した答えだった。
シムズがアイリスに対して明確に愛を伝えるシーンは最後の回想シーンしかない。最後には「僕が君をどれだけ愛したいるか君にはわからないだろうね」と発言したことで私たちは初めてシムズがアイリスを愛していたことに気がつく。これが最初で最後のシムズがアイリスに伝えた明確な"愛"なのだ。
しかしシムズはファルセットが聞こえないフリをすることで不器用ながら、そしてすごく遠回しにアイリスへの愛を伝えていたのである。
そして、水と関連させ、これはモリスにも影響していると言える。
モリスは最初の場面で雨に手をかざし、そして最後の場面で雪に手をかざす。雨を手にかざすときはすごく険しい顔をして、そして雪を手に取る時にはすごく優しい顔をするのだ。
モリスはウッドナットとして、そしてモリスとしても”実体のあるもの”に固執していた。モリスは父親から形に何か残るものが欲しかった。それは何でもよかった。残る物なら何でも。
だから最初の雨のシーン、目に見えない雨(特にこの場面は照明が暗かったから余計雨など見えなかった)は何者でもなく、存在意義のない物だと感じていた。"雨なんて"そんな雰囲気を感じさせるようなモリスの表情だった。険しかった。しかし、NETHERの世界を通して目に見えるものだけが存在意義のあるものではないことに気がつく。
水は凍れば氷になる。
雨は凍れば雪になるのだ。
つまり、私たちが"見えていなかったもの"、"見えないもの"=雨
は存在しないわけじゃない。
形を変えて見えなくなっているだけなのである。
彼が最後、劇中のウッドナットと同じ動作をする何かを手に取って、胸に当てる動きだ。彼の手に取った雪は目に見えるもの、そして彼が手にとって体温で溶かしたことによって雨になったそれも、存在するものなのである。
NETHERの世界で凍ると溶ける事が同時に発生する氷のケーキは偽りの物であった。それは存在している様に見えて、存在しない、存在できないもの
だったのだ。
モリスは現実の世界で凍る事と溶けることを自分の手で確認することによって、自分の行動は間違っていなかったと、自分の生きていく現実の世界は本物の世界であるということを自分自身で確認し、新たに一歩を進んでいくのである。